「チラシとカレンダー」をつくった理由(わけ)

ショッピングセンターや図書館へ行くと、入口の近くに掲示板があります。
そこには、コンサートや写真展、お祭り、マルシェ、講演会、演劇、ワークショップなど、地域で開かれるさまざまな催しのチラシが並んでいます。
私は、あの掲示板が好きです。
一枚一枚を眺めているだけで、「このまちでは、こんな人たちが、こんな活動をしているんだ」ということが伝わってきます。地域の空気や季節、人の営みが、小さな紙の上に凝縮されているように感じるのです。
ある日、その掲示板を見ながら思いました。
「この掲示板を、そのままWebにできないだろうか。」
それが、「チラシとカレンダー」の始まりでした。

情報は、やがて資料になる
イベント情報を紹介するWebサイトは、世の中にたくさんあります。
SNSもあります。
検索サイトもあります。
でも、それらを見ていると、少し物足りなさを感じていました。
イベント情報はある。
けれど、その地域でどんな人たちが活動し、どんな文化が育まれているのかまでは見えてきません。
掲示板の前に立つと、「今日はこんな催しがあるんだ」「来週は写真展が始まるんだ」「こんな小さなコンサートもあるんだ」と、思いがけない出会いがあります。
あの偶然を、そのままデジタルで再現できないだろうか。
そんな思いが、ずっと心のどこかにありました。
もう一つ、気になっていたことがあります。
イベントが終わると、チラシは掲示板から外されます。
その役目は終わった、と考えればそれまでです。
でも、本当にそうでしょうか。
開催前のチラシは、「今、役に立つ情報」です。
けれど、開催が終われば、「この地域で、この時期に、こんな催しが行われていた」ということを伝える、大切な地域資料になります。
情報は、時間とともに資料へ変わる。
そのことに気付いてから、「チラシとカレンダー」という仕組みを考え始めました。
本当は、NPOで取り組みたかった
この構想は、最初から03合同会社の事業として考えていたわけではありません。
本来は、地域資料デジタル化研究会(デジ研)の事業として、「八ヶ岳チラシとカレンダー」を提案していました。
地域で生まれるイベントや文化活動を集め、開催前は地域のみなさんや観光客のための情報として届ける。
そして、開催後はデジタルアーカイブとして未来へ残していく。
私は、こうした取り組みは一企業だけで行うものではなく、地域のNPOや図書館、博物館、観光団体、自治体など、多くの人が関わりながら育てていく公共性の高い活動だと考えています。
一方で、こうした活動を続けるには、理念だけでは成り立ちません。
継続するための人手も、時間も、収入も必要です。
NPOには八ヶ岳コモンズという大切な活動がありますが、将来を考えたときには、それ以外にも地域を支える自主事業を育てていく必要があるのではないか、と以前から考えていました。
「八ヶ岳チラシとカレンダー」は、その一つの可能性でもありました。
しかし、当時の体制では継続的な運営が難しいという判断から、事業化には至りませんでした。
私は、その判断を否定したいわけではありません。
地域の活動を続けることの難しさを、私自身もよく知っているからです。
この夏を逃したくなかった
それでも、この構想をそのまま眠らせることはできませんでした。
理由は、とても単純です。
夏は待ってくれない。
清里高原では、一年で最も多くのイベントが開催されるのが夏です。
この夏を逃してしまえば、次に十分な実証ができるのは一年後になってしまうかもしれません。
地域には地域の時間があります。
イベントは、その季節、その年、その瞬間にしかありません。
だから私は、完璧な計画を待つよりも、まず動くことを選びました。
AIという新しい道具の力も借りながら、短期間でシステムを組み上げ、この夏の公開に間に合わせました。
AIが勝手に作ってくれたわけではありません。
何を作るのかを考え、試し、修正し、最後に責任を持つのは人です。
でも、AIという新しい相棒がいたからこそ、このスピードで実現できたことも事実です。
なぜ「清里高原」なのか
本当は、最初から八ヶ岳全域で始めたかった。
でも、それでは続きません。
まずは、自分一人でも無理なく運営できる範囲から始める。
毎週通い、自分の足で情報を集められる地域。
それが、清里高原でした。
だから、最初の名前は「八ヶ岳チラシとカレンダー」ではなく、「清里高原チラシとカレンダー」です。
小さく始めて、長く続ける。
その先に、少しずつエリアを広げていけたらと思っています。
三つの時間でできたサイト
サイトの構成は、とてもシンプルです。
最初は、「今日から未来へ」。
これから開催されるイベントを探すページです。
次に、「今日のイベント」。
「今日、この地域では何をやっているの?」
その問いに答えるページです。
そして、「アーカイブ」。
開催を終えたイベントを記録として残していくページです。
- 未来を案内し、
- 今日を楽しみ、
- 昨日を残す。
この三つの時間が循環することで、「今、役に立つ情報」が、やがて「未来に有益な資料」へ育っていきます。
Webサイトから地域の情報基盤へ
最近になって、もう一つ面白いことに気付きました。
「今日のイベント」のページは、スマートフォンで見るだけではありません。
そのままデジタルサイネージとして使うことができます。
駅や観光案内所。
ホテルやペンションのフロント。
カフェや公共施設。
タブレットを一台置くだけで、「今日、この地域で何があるか」が分かる案内板になります。
さらに、QRコードから自分のスマートフォンへ情報を持ち帰ることもできます。
そして、お風呂に入っているときに、もう一つのアイデアが浮かびました。
RSS配信です。
イベント情報をRSSで配信すれば、ほかのWebサイトやデジタルサイネージ、地域情報サービスなどが、自動的に最新情報を受け取ることができます。
一つのホームページを作ることが目的ではありません。
地域のイベント情報が、必要な場所へ自然に届く仕組み。
そんな地域情報の基盤へ育てていけるかもしれない、と考えています。
一年後には、小さなデジタルアーカイブ
一年間運営すれば、その一年分のイベントは、一冊の地域史になります。
派手な記念誌ではありません。
でも、「2026年の清里高原では、どんな催しが行われていたのか。」
そんな問いに答えられる、小さなデジタルアーカイブになります。
私は、イベント情報サイトを作りたいのではありません。
今、役に立つ情報。
そして、
未来に有益な資料。
その二つを同じ仕組みで育てていきたいのです。
地域の活動を応援する、その先に
もちろん、この活動から新しい仕事が生まれることもあるでしょう。
イベントの参加記念として、「こがしや™」のウッディメダルを採用していただけるかもしれません。
開催記録を電子書籍として残すお手伝いができるかもしれません。
でも、それは目的ではありません。
地域の活動を応援する中で、「こんなこともお願いできますか」と声をかけていただける。
そんな自然な広がりが生まれたら、とてもうれしく思います。
「まちの目次、地域の索引」へ
地域には住所があります。
番地もあります。
でも、本には目次と索引があります。
目次があれば、その本に何が書かれているのかが分かります。
索引があれば、知りたいことをすぐに探すことができます。
地域にも、そんな「目次」と「索引」があっていい。
どこで、誰が、何をしているのか。
どんな催しがあり、どんな人が活動し、どんな歴史が積み重なってきたのか。
イベントは、その入り口の一つです。
一枚のチラシから、人へつながり、場所へつながり、歴史へつながっていく。
そんな地域の知識基盤を、少しずつ育てていきたいと思っています。
「清里高原チラシとカレンダー」は、完成した事業ではありません。
まだ始まったばかりの、小さな実証プロジェクトです。
けれど、この小さな一歩が、いつか 「まちの目次、地域の索引」 づくりへつながっていくことを願っています。
そして、その頃には、この取り組みが一つの会社だけのものではなく、地域のみんなで育てる仕組みになっていたら、それ以上にうれしいことはありません。
丸山高弘
03合同会社 CEO
デジタルアーキビスト
【開発メモ】
- WordPress
- テーマ: GeneratePress
- プラグイン: Advanced Custom Fields、The Events Calendar、FileBird
- スニペット: 生成AIを開発パートナーとして独自に作成

